弾いて、弾いて、弾いて

クラフトフェア前夜。
山房のカレンダーの前には、大きなてるてる坊主がふたつ並んでぶら下がっています。


フェアの打ち合わせをしたあとは、セロを弾く5行の群読づくりの作業を行いました。朗読ということもあって、頭を寄せ合って台本とにらめっこをする地味な稽古の日々が続いています。
近づこうとしては跳ね返されて、打ちのめされる、この距離感。
観客を迎えるまでは決して完成はしていませんが、ある程度のかたちができあがっている本番の日には、自分たちなりのやり方ですでに作品と一体になっているため、作品全体はもう役者には見えなくなってしまっていますから、今がもっとも、その文体の独特のひだや肌触りが感じられるときかもしれません。
夢十夜のときにもそんな感覚があったように思いますし、みんなで長い間ひどく苦しんだように思いますが、過ぎてしまうといい加減なもので、ほとんどその苦労を忘れてしまっています。
けれども、ひとりで黙読するのでは決して見つからない響きを見つけてゆく作業には、本番の晴れの舞台とはまた違った喜びがあることも、あらためて感じています。